宝石の国 朗読コンサート(夜の部) 感想

三行:

楽しかった

以下長々とした文章

最近記録みたいなブログしかつけてないなと思ったので文章書いてみることにする。声優さん各位について敬称を省略しています。

背景

就活のあれこれで東京にしばらく滞在することになり、とはいえ休日は暇でどう時間潰そうかなと考えてたところツイッターでそういうイベントがあるということ、当日券の販売があるという情報が流れてきたので行ってみることにした。一応オタクなので声優見にいくか〜という動機が70%くらいとあと普通に宝石のアニメは珍しく毎週楽しみに見ていたので、普通に作品イベントに行けるなら行こうかなと思えたのもある(ちょうどsideMのアニメの時期で比較的放送を追うという行動のハードルが低かった。普段は基本的にまとめ見派)。

会場はそこそこの大きさのホールという感じ。こないだ声優ラジオのイベントで行った中野サンプラザホールとほとんど同じくらいの広さ(少しだけ今回の方が小さいかな)だと感じたので行ったことある人はそれをイメージしてもらえればよさそう。普段行く/見るイベントがアイドルマスターのライブで、最近は規模がドームだったりSSAだったりなので基本的に演者が豆粒なことが多いんだけど、これくらいの規模の会場だと、確かに「同じ場にいて一つのイベントに参加している」と感じられる。

イベントの中身をざっと

内容は主に映像を上に写しながら(一部) * (生アフレコ+生劇伴)で放送分の名シーンをピックアップという感じ。これは直積的表現で、つまり例えば今回出演するキャスト以外のキャラの音声などは放送分をそのまま流しながら、出演キャスト分のキャラのみ声を消してその場で演技を当てたり、一部の劇伴(こっちはもしかしたら全部だったかもしれない)を生で披露していた。映像を注視していると一見本放送とあまり区別がつかず、朗読劇であるという趣旨が最初少しわかりにくいと感じた(極論を言えば、声優が口パクしていても気付けなさそうだな、みたいに思った)。途中から映像の口パクと演技が少しずれる瞬間などもあり、その際に「ああ、今この場で当ててるんだなあ」と実感できるという感じ。逆に言えば口パクレベルでずれてもカットの切り替わりに食い込んだりみたいなことはほとんどなかったと思うのでプロの尺管理、記憶能力はすごいということでもある。演技らへんについて詳しくは後述。

今回のイベントのもう一つの要素として生劇伴、そして主題歌のライブというものがあった。まず劇伴だけど、日頃劇伴というものを「音楽」としてあまり認識していない(それはそうで、基本的にBGMというのはシーンにあった感情を盛り上げるための黒子であり、曲そのものの存在感を持つのは微妙だと思っている。それはそれとして改めて聞き直して好きな曲は繰り返し聞いたりするんだけど。浜口史郎とかが好き)と思うんだけど、まず劇伴の音楽がちゃんと目の前でピアノやらバイオリンやらチェロやら(楽器の種類は違うかもしれない)で演奏されているという体験は新鮮でよかった。途中から朗読劇に集中してあまり気にならなくなってくるんだけど、ありきたりな表現だけどBGMだって一つの曲で、人が演奏しているんだなということを再認した。

OP・EDライブについて。特に宝石のOPはかなり好きで、変わったテンポと退廃的かつ透き通ったようなメロディーが凝ったOP映像とあいまって作品世界を表していたと思うんだけど、カラオケで歌ってみるとこれが実に難しくて、それでもちゃんと歌ってたのでさすがプロは違うなあと思った。可能ならここも生バンドで揃えて欲しかった気持ちがあるんだけどそうはならずそこは残念だったかもしれない。全体的に完全に生でやるというよりは重要な部分だけを人を集めて生でやるという形になっていて、それはコストパフォーマンス的には間違いなく正解なんだけど受け手側としては徹底したものを体験したかったなと少しだけ感じた。

アンタークらへんの話が終わってフォスフォフィライト(黒沢ともよ)の特殊EDの生披露(これは伴奏含めて全てが生だった)が終わったところで挨拶を挟んで最後に軽いトークコーナー。最初は劇が終わった後挨拶でそのまま終わりかと思ったので「ストイックなイベントだな〜」と思ったんだけど、思わぬ旨味があってよかった。トークは作品、演技、今回のイベントについての話を冗談なども交えながらわりと軽いノリで色々話すという感じ。アイドルマスターのイベントで見たことがあった黒沢ともよ以外の声優は生で見たのは初めてだったけど、佐倉綾音はよく映像ありラジオで見てたので「おー佐倉綾音だー」という幼稚園児みたいなお得感を味わえた。佐倉綾音が主にトークの軽い部分を担当してくれていて、このイベントでは聞けないかと思ってたオタクの冷やかし声とかが聞こえてくるような展開もあり、そういう側面でも最低限のバリューを確保してくれるのは偉いな、と思った(何様目線なんだ)。特に次の展開とかの発表はなかったんだけど、円盤とかの売れ行きはどうなんだろう。少なくともなぜか宝石(実物)はそれなりに売れたみたいな話は流れてきた気がするが…

演技などについて

当然のごとく一番多くセリフがあったのは黒沢ともよなのでまずその話を。以前から黒沢ともよの最近の演技(主にユーフォの黄前久美子、宝石のフォスフォフィライト、あとまあ加えてバンドリの奥沢美咲など)はかなり舞台の方向に寄っているな、と感じていた。情報量が多い反面、演技として「綺麗」(ここでは、ツルッとしている、テンプレート的な演技の意)ではないので一般的なアニメにはなじみにくく、使い所が難しいみたいなイメージがあった。逆を言えばこういう黒沢ともよにこういう演技をさせるとき、それは量産される一つのアニメーションではないような作品を作る、という意思表示みたいな感じがする。ちなみにそういう演技も一般的なアニメーション演技もできるのが悠木碧かなあと勝手に思ってる。黒沢ともよも有栖川おとめ(アイカツ)だったり赤城みりあ(シンデレラ)などもやってたりするのでそういう演技もできないわけでは全然ないんだけど。

それでその舞台に寄った演技をする黒沢ともよにとって、このような演劇とアフレコの間のような朗読劇というのはまさにうってつけの場所だったと思う。特に印象的だったのは出番前のライトが当たってない時点での入場の歩き方で(出番によって演者がステージに出たり入ったりする)、少し大げさな行進のような歩き方がまさにフォスフォフィライトのように見えたところで、「ああ、そういうところから(演技を)やってるんだなあ」と思った。最近の2(.5)次元ライブなどに代表される声優を通してキャラクターを感じるようなイベントの場ならそういうことはまま見れたりするんだけど、あくまで「演じる場」である朗読劇というシチュエーションでもそういうところを見れたところにある種の哲学を感じたかもしれない。それ以外にも、例えばウェントリコスス殻からフォスフォフィライトが復活したあと、激しく怒るシーンではほとんど映像と同期しているかのごとく身振り手振りを交えながら演技していたりしていて、声優も「演者」の一種なんだなあと感じさせられた。もっとも今回衣装も作中の宝石たちの衣装に寄せたものになっていたりして、2.1次元くらいの要素があったというのもあるかもしれないが。中田譲治は袈裟着てたし。

もう一人今回特にうまいなと思ったのが茅野愛衣。もちろんセリフが多かったというのもあるが(シンシャ(小松未可子)、ボルツ(佐倉綾音)は出番が比較的少なかった。最後のトークでその辺を自虐する下りもあったりした)、こちらは演技の安定性、再現性という観点で今回出ていた人間の中で最も優れていたように感じた。必要な分の情報量を残しながら、安定した質の演技を何回でも、どんなシチュエーションでもアウトプットできるみたいなイメージ。もちろん声質的に激しい感情演技を求められることは比較的少ないのかもしれないが、こちらは単純に声優としての力量みたいなところを生で見られたと思った。

総括

こういうイベントは小学生のときガンダムSEED DESTINYのやつに行ったっきりだったんだけど(大阪城ホールでなんかやってたやつ、あんまり記憶ない)結構楽しめた。まずやっぱり集中してもう一度作品のことを考え直す機会としてとてもいい時間だったと思う、最近集中力がなくなってきているので、日常を離れて映画館とかこういうイベントのような、作品のこと以外は考えなくて良い、むしろ考えてはいけない空間に閉じ込められて物語に集中するという体験ができるのは良い。
声優の演技についても、生で見ることでやっぱり色々な刺激があった。どうしてもコンテンツライブだと楽曲を音楽的に楽しむことに演じ手受け手双方のリソースが割かれてしまうことがあり、純粋な演技そのものを味わえる場としてはこのようなストイックなイベントが良いように思う。最近は情報ではなく体験の時代ということは結構言われていて、たとえばアーティストとかも近年は音源の売り上げではなくライブの興行でお金を得ているみたいな話を聞くんだけど、アニメについても同じことが成り立つと考えていて、ちょうど音源とライブの関係がアニメーションと朗読劇の関係に対応する。その場で人間が演じるというライブ感と演技の相互作用によって醸成される空間の緊張感、そしてその場を共有しているというある種の一体感の価値は大きく思えるので、今後こういう形態のイベントが流行っていってもいいんじゃないかな、と思う。もちろんそれに耐えられるような作品である必要はあると思うけど……

まあ結論としては楽しかったです。佐倉綾音がニーソっぽいタイツ履いてて、話の展開的にその辺りがズームで映されるシーンとかあって美味しかったなって思う。最後に台無しの感想だ。